Wednesday, December 15, 2010

イスラム教:預言者ムハンマド 「2」

ムハンマドが天使ガブリエル(Jibra'il)に「読め!読め!」と言われたときの続き。

天使ガブリエルはこのような言葉で始まる神の啓示を伝え、この聖旨(せいし)を人々に伝える神聖な任務につくべきことを求めた。動転した彼は悪霊の仕業かと錯覚して容易に了承しなかった。しかしガブリエルは彼を押さえてはなさず、神の召命(しょうめい)に従うべきことを強く迫った。彼は思い悩んだすえ、その苦しみを貞淑な妻ハディージャに打ち明けた。ハディージャはムハンマドの霊的体験を重視し、神の召命に服して、福音の伝道という聖なる任務につくべきことをすすめた。ムハンマドは妻の忠告に従って、預言者としての使命に目覚め始めたものの、なおも内面的苦悩を脱しえなかった。かくしてやく2年余りの「中断」ののちに、彼は再びある日突然、強烈な霊的衝撃におそわれ、長衣(ながぎぬ)に身を包んで床にころがった。その苦悶のさなかに彼は再び、

おお汝包まれたる者よ、起って教えを宣べよ。汝の主を讃えよ。云々。
-74:1~3
に始まる神の啓示を開いた。

この時から神の啓示は次々降り始めた。ムハンマドは、このようにして次々に降ろされた神の教えを忠実に記憶し、身近な人々に伝えるとともに、メッカの街頭に立って、イスラムの信仰を説き始めた(614年)。それはムハンマド自身の宗教的信念の宣布ではなく、あくまでも神の啓示の忠実な伝達だった。こうしてムハンマドのまわりには、信仰のあつい共鳴者(教友)が同志的意識の下に結集するようになった。これこそイスラム教団の起源であり、後のサラセン大帝国への発展を約束されたあの強大なイスラム共同体国家への萌芽(ほうが)でもあった。しかし当初は教団員の数も少なく、信徒の結集も強力とはいえなかった。のみならず、クライシュ族を中核とするメッカ市民は、ムハンマドを狂人(もの憑き)であるかのように誤解して彼をののしり、またアラブの部族的特権社会を破壊しようとする異端者とみなして排斥した。

こうして、ムハンマドは数々の迫害をうけ、一時は生命の安全さい危ぶまれた。迫害は波状的に、また陰険に、くりかえされた。ムハンマドの家には毎晩のように石や動物の死骸が投げ込まれた。ムハンマドが礼拝に赴く道は、茨が散らかれ、彼の足には何度も血がにじんだ。

続く。
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